富士川町歴史文化館
下部温泉の翌日、富士川沿いをドライブしました。最上川、富士川、球磨川は日本三大急流と呼ばれますが、米や特産品などを運ぶ水運が盛んに行われ、日本経済に重要な役割を担いました。保津川開削で有名な角倉了以が富士川開削にも活躍しました。米が下り、塩が上ったそうで、起点の鰍沢(かじかざわ)は塩の別名となり、瀬戸内の塩が信州まで運ばれました。塩街道の終点が塩尻と教えていただきました。
南アルプス市 ふるさと文化伝承館
鋳物師屋(いもじや)遺跡から出土した「人体文様付有孔鍔付土器」は海外展にも引っ張りだこの縄文文化を代表する土器で、中学校歴史教科書の表紙にも採用されています。3本指ですが愛称は「ぴ~す」です。円錐形土偶は子宝の女神で愛称は「ラヴィ(フランス語で命の意味)」です。東京で開催されていた「古代DNA展」ではオリジナルグッズとしてこの2体のぬいぐるみが販売されており、実物と購入したぬいぐるみを並べて撮影できました。「ラヴィ&ぴ~す」は、いずれも重要文化財です。
南部氏展示室
子供の頃、盛岡なのになぜ南部なのかと不思議に思っていました。甲斐源氏の加賀美光行は石橋山の戦いで頼朝に与した功績で富士川西岸の南部郷を領し南部三郎光行を名乗ります。南北朝時代に玄孫の南部師行(もろゆき)は陸奥守北畠顕家に従い、八戸に根城を築城し奥州南部氏の歴史が始まります。展示室は道の駅「なんぶ」に併設されており、頼朝を守った光行の銅像が迎えてくれます。
フランスパビリオン
ルイ・ヴィトンのトランク135個が光り輝く空間は総額2億7千万円。初代ルイ・ヴィトンさんはトランク職人だったそうです。部屋の中央にはロダンの「カテドラル」が展示され、クラークマンシップ(職人魂)を表現しています。「もののけ京都」でのトランクの上に立つ村上隆の「お花の親子」を思い出しました。
ディオールの展示ではフランス国旗を象徴する3色のバースーツの左右に吉岡徳人のメダリオンチェア。またシルエットのスケッチを立体表現した約400点の白いトワルの中央には写真家・高木由利子によるディオールのモデルたちの映像。ディオールと日本人アーティストによるとても美しいコラボ展示でした。
中国パビリオン
古代中国の書物「竹簡」をモチーフにした外観は素晴らしく、入館の待ち時間も文章を検索していると退屈しません。左に曹操の短歌行の一節を見つけました。展示では三星堆遺跡の精巧なレプリカや「耕織図」のデジタル映像が印象的でした。昨年6月に無人探査機・嫦娥(じょうが)が採取した月の裏側の砂も展示されていました。
火星の石
日本館に「火星の石」が展示されています。日本の観測隊が2000年に南極で「拾った」石です。南極に落ちた隕石は数百万年の時をかけて氷床内部を移動し、山脈があると徐々に表面に押しだされ氷上に露出するのです。石を分析すると内部の空気が、NASAのバイキング探査機が観測した火星の大気成分と一致、また内部に水の存在を決定づける粘土鉱物があり、火星に水が存在していたことの証拠となりました。約1000万年前に火星に巨大隕石が衝突し火星を飛び出した岩石が隕石となり地球に落下したということもわかったそうです。
世界の料理
左はウジアラビアの料理です。羊は豪快な蒸し焼き、魚も一匹丸ごとカラッと揚がっていました。数種類のソース(つけダレ)がエスニックで、香辛料のタレで食べる長粒米の粥も面白い味でした。右上はポルトガルの海鮮料理、オリーブやニンニクで美味です。東欧料理(セルビアやチェコ)もはじめていただきました。
PASONA
iPS細胞から培養された心筋細胞を見るために入館しました。ブラックジャックによりiPS心臓を移植された「ネオアトム」が地球を守るために闘うストーリーで、素晴らしいアニメーションの映像が立体パネルの全ての面で展開していきます。9本の立体パネルがくっついたり離れたり、さらに千住明の音楽も感動的です。
故宮南院
台湾南部の台南市に宿泊し、オプショナルツアーで嘉義郊外の故宮南院を見学しました。明の初代皇帝洪武帝(朱元璋)の特集展示では教科書に記載されている有名な肖像画、清の乾清宮の展示では、美しいブルーの冠やグリーンの指甲套(しこうとう)など、中国宮廷ドラマでおなじみの後宮女性の装身具が並んでいました。
阿里山森林鉄路車庫園区
日本統治時代に台湾総督府が阿里山の林業資源開発の目的で敷設した鉄道の嘉義の拠点、北門駅とその周辺の車庫一帯が公園になっています。100年前にアメリカから購入した蒸気機関車など当時の貴重な車両が展示されています。
鳥山頭水庫風景区
八田與市は四高東大出身の水利技術者で1920年から10年かけて鳥山頭ダムを建設、嘉南平野一帯に16000kmの水路を建設し、台湾最大の穀倉地をつくりました。台湾の中学教科書に記載され、現地の記念館や銅像で顕彰されています。植民支配者側の人間ですが、高い能力とともに人間性が評価されていることがうかがえました。
林百貨店
1932年に台湾で2番目の百貨店として開業、台南では唯一のエレベーターを備え、当時「銀座通り」と呼ばれた台南一の目抜き通りに建っています。2013年に修復再現され、各階に特産品やおしゃれな雑貨が並び、最上階のカフェでは豆花など台湾スイーツを楽しめます。また、夜景の写真は多くの台南観光のパンフに登場しています。
安平古堡
1624年にオランダ東インド会社が安平を占領し、砂州であるこの地にゼーランディア城を建築します。内海の対岸には現在の台南中心部が発展していきます。1661年、明の遺臣、鄭成功が戦闘でオランダを追い出し、清に対する抵抗拠点とします。オランダ人が来る以前、この地には原住民シラヤ人が住んでおり、シラヤ語では「港」がタイワン(タイナン)で、台湾や台南の語源という説があります。
延平郡王祠
中国人を父に日本人を母に持つ鄭成功を和藤内(和でも唐でもない)という名前で1715年に近松門左衛門は浄瑠璃「国姓爺合戦」を発表します。「吾輩は猫である」で和藤内を知ったのは中学生の時でした。すでにオランダ人が労働力として漢人を台湾に連れてきてはいましたが、鄭成功の後継者は中国本土を追われた数万人の漢人とともに屯田で土地を開拓していきます。清朝支配の後に、鄭成功は漢族系住民による台湾開発の始祖として祀られてきました。
台南の小吃(シャオツー)
小吃(シャオツー)は、店や屋台で食べる中華の一品料理のこと。人々は基本的に3食とも外食の文化で、安価で美味しい食事を提供する小さな食堂が山のようにあります。麺類、包子(パオズ)、粽、肉料理、炒飯、魯肉飯、そして、杏仁豆腐、豆花などのスイーツも。2022年ミシュラン・ビブグルマンに、虱目魚(サバヒー)料理、擔仔麵(ダンザイミェン)、土魠魚羮(トゥートーヒーゲー)、米糕(ミーガオ)、牛肉湯(ニョウロウタン)などの店が選ばれています。1品500円前後でした。
台湾歴史博物館
台湾では人々はバイクで移動し、バスはあまり走っていません。タクシーも「流し」は少なく、アプリまたはコンビニで呼びます。市内のホテルからタクシーで15分、1500円くらいでした。常設展示はジオラマを駆使した素晴らしい展示です。
右中は、台湾人の視点から第2次世界大戦を描く台湾ドラマ「聴海湧」のコーナーです。旧日本軍に従軍して捕虜監視員となった3人の台湾人の運命を描くドラマです。
イタリアパビリオン
ナポリ国立考古学博物館所蔵の「ファルネーゼのアトラス」、古代ローマ彫刻としてはラオコーンとともに有名です。カラバッジョは「法悦のマグダラのマリア」「リュート弾き」以来3回目、もちろん「キリストの埋葬」(バチカン美術館)は初めてです。
最新のテクノロジー
話題の「null²(ヌルヌル)」は、パビリオンが柔らかい鏡の「ミラー膜」で覆われ、写し出されるヌルヌルとした景色と、建物の振動で響き渡るサウンドにただただ圧倒されます。夜間のライトアップはこの上もない美しさです。「17時からの開放時間」のおかげでようやく予約・体験できた内部のプログラムは、AIがつくりだす極彩色の映像の洪水、バーチャルとリアルの融合したストーリー、冒頭の三波春夫の「世界の国からこんにちは」からエンディングのAIによる「さようならヌルの森よ」までここでしか聞けないサウンド、等々「最新テクノロジー体験」でした。
石黒浩の「いのちの未来」のマツコロイドは想定内でしたが、ZONE3のアンドロイドの表情には、正直に言うと一種の「怖さ」を感じました。
御舟と一村
箱根の岡田美術館の表題の展覧会です。残念ながら撮影禁止なので入口の写真のみですが、正面が田中一村の「白花と赤翡翠」、右が速水御舟の「木蓮」です。会場では2点が向かい合って展示されており、どちらもその実物を近接して鑑賞すると、写実絵画ではない完ぺきな写実、信じられないほどの精緻さに涙が出ました。絵を見て泣いたのは、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」以来でした。
富士屋ホテル
金谷ホテル、万平ホテル、川奈ホテルなどと並んでクラシックホテルとして有名な箱根宮ノ下の富士屋ホテルです。明治8年創業で建物は登録有形文化財です。創業者が「外国人の金を取るをもって目的とす」という言葉を残しているそうで、チャーチル、ヘレンケラー、チャーリー・チャップリン、ジョンレノンなどが宿泊しています。
箱根駅伝で選手の位置関係を放送する際によく使われ、箱根のランドマーク的な存在のホテルです。
石垣山一夜城
大河ドラマ「独眼竜正宗」で、小田原城を眺めながら秀吉役の勝新太郎が「もう少しでこの首が落ちるところだったのう」と政宗役の渡辺謙の首を刀でピタピタした後に、その刀を政宗に持たせて立小便をした、あの有名なシーンの場所に、とうとうやってきました。とてつもなく広い付け城でした。また、北条氏が小田原城の周囲に築いた総距離9kmの総がまえの堀と土塁にも行ってみました。
二宮尊徳記念館
子育て中にポプラ社の子供のための伝記「二宮金次郎」でその偉大な一生を知ったときは大変驚きました。生誕地には生家が再移築されており、展示室は、アニメ、ジオラマがわかりやすく、職員さんの解説も親切で、肉筆にも感激しました。
日本国宝展
大阪市立美術館リニューアル記念の日本国宝展に行きました。洛中洛外図(舟木本)、若冲の動植綵絵から3幅、渡辺崋山の鷹見泉石像、瓢鯰図、王義之の喪乱帖、後鳥羽天皇宸翰など、教科書に載っている国宝をたくさん見ることができました。
超国宝 中宮寺半跏思惟像
奈良国立博物館開館130年記念の超国宝展です。中宮寺の菩薩半跏思惟像が関西で公開されるのは久しぶりかと思います。乙巳の変の後の650年頃、孝徳天皇時代の制作と考えられているようです。今は漆黒の清楚な仏像ですが、ほかの仏像と同じく元来は極彩色で金箔に覆われた華やかな彫像だったそうです。今の色彩になってしまったことで世界でもっとも美しい仏像彫刻になりました。