東沢釜ノ沢 両門の滝
山梨県の日本百名山、甲武信ガ岳(こぶしがたけ)南面の笛吹川東沢釜ノ沢へやってきました。この沢のハイライト、両門の滝です。左右の沢から30mの滝がかかりここで合流してきれいな淵になっています。今回の所長の部屋は8月19日の東沢遡行記です。
西沢渓谷入口
山梨県と埼玉県を結ぶ国道140号は、雁坂峠(日本三大峠の一つ、標高2,082m)を貫通する雁坂トンネル(6,625m)やループ橋があり、幹線であるとともにドライブコースとしても人気です。勝沼インター経由、道の駅「みとみ」に駐車して、5時50分に出発です。
西沢分岐の吊り橋
林道を30分歩いて吊り橋に到着。吊り橋を渡り終えて真っすぐに行くと鑑賞路が整備されている観光地としても有名な西沢渓谷です。私たちは右折して東沢へ入ります。
この日はやや水量が多く、鶏冠谷出合いからフェルト底の渓流シューズに履き替えました。
旧登山道
私が学生の頃、東沢は甲武信ケ岳への一般登山道でした。当時に登ったことがないのでよくわかりませんが、現在よりも登山道として手入れされていたのでしょう。左に東沢の流れが見えます。両岸が岩壁の狭い谷をゴルジュ(フランス語で喉)といいます。
ホラ貝のゴルジュ
「見よ!笛吹川の渓谷は、狭(せばま)り合って見上ぐるかぎり上流の方へ峭壁をなし、その間に湛へる流れの紺碧の色は、汲めども尽きぬ深い色をもって上へ上へと続いている。流れはいつまでかくの如き峭壁にさしはさまれているだろうか。」『笛吹川を遡る』で明治の登山家及び文筆家の田部重治が賞賛して世に紹介したホラ貝のゴルジュです。滝やゴルジュを避けてう回して進むことを高巻きといいますが、ここの高巻は高度感満点でした。
山の神からの渡渉
高巻きのあと河原に降り立ちました。河原の小山の上に山の神という祠があります。昔から川漁師や山菜取りの人々が安全を祈願したのでしょうか?ここから沢歩きが始まりますが、水量が多く、思うように進めません。何度も渡渉(としょう)を繰り返しました。
エメラルド色の淵
きれいな淵です。右側はすべりそうなので左側を進みます。水深は膝下まででした。
西のナメ沢
左右から次々に枝沢が合流しますが、ここは左(右岸)から。8時50分に到着し、一休み。ここでウォータースライダーをしているyoutube動画がありますが、ツルツルで登れそうに見えません。
千畳のナメ
釜ノ沢分岐を右の釜ノ沢へ、魚止の滝を右岸の踏み跡で高巻くと美しい200mのナメです。 両門の滝とともにこの沢の見どころです。陽も差してテンションが上がります。やや滑りますが、渓流シューズで楽しく歩きます。
3段の滝
千畳のナメをすぎると3段の滝です。右岸から高巻きします。ここもちょっとこわかったがお助けロープがありました。ここからも小さい滝や淵を越えていきます。
両門の滝
約4時間半歩き10時30分に到着、ここでお昼休憩。ラーメンとサタケのマジックライス(熱湯15分)を食べました。右の滝の上部が釜ノ沢東俣で登り詰めると甲武信小屋です。
マヨイ沢とヤゲンの滝
両門の滝の右を高巻くと、ヤゲンの滝(20m)、生薬をつぶす道具の薬研(やげん)の形です。道を示す赤テープをたどると、右のマヨイ沢を少し登って左へ巻き道がありました。
天然シャワー
巻き終わるとヤゲンの滝と次の10mの滝の間に降り立ちました。水しぶきが、火照った身体に気持ちいいです。ここは流れを左へ渡ってさらに登っていきます。
ミズシ沢手前の連瀑
この上は、流木で荒れたゴーロが続きます。左岸の樹林帯に道があり、テント泊の焚火跡がいっぱいありました。約1時間樹林帯を歩くと、今度は、傾斜のある連瀑帯です。
ミヤマダイモンジソウ
ミズシ沢分岐を左に見てさらに登ると木賊(とくさ)沢の手前で、傾斜のある荒れたナメになりました。13時40分、ここで小休止です。ミヤマダイモンジソウは、高山帯の湿った岩場や草地に生育します。なるほど大文字ですね。私たちを待っていてくれたように感じました。
木賊沢の高巻き
20mの滝の上に右から木賊沢が合流しているのが見え、右へ高巻きますが赤テープの上はほぼ垂直です。右のガレに行っても進退きわまり、戻って垂直の壁を事務長に登ってもらいます。「次の赤テープありました。」掴める枝はすべて掴んで渾身の力を振り絞ってよじのぼり、滝をはるか左下に見て、小さな峰を越えると、今度は掴める枝をすべて掴んで降りました。ここは本当にこわかった。
木賊沢分岐上部の連瀑
14時10分、もう恐怖の高巻きはありません。写真でみるとすごい急傾斜ですが、高巻きで感覚がマヒしたのかこれくらいの傾斜は平気になっていました。岩にはしっかり凹凸があり、滑る心配もありませんでした。残った筋力と根性で登ります。
東沢源流
東沢源流にある甲武信小屋の水源ポンプ小屋に14時40分到着。登ってきた方向を振り返りました。右のホースの水から川が始まるのです。無事に遡行できたことにウルウルしました。
甲武信小屋
作業道を登ること12分、ついに甲武信小屋につきました。ここで渓流シューズを脱いでトレランシューズに履き替えます。15時20分に下山開始し徳ちゃん新道を降ります。17時50分、駐車場に帰りました。行動時間12時間。人生で最も歩いた1日となりました。重い水と食料を持って先行・ルートファインディングしてくれた事務長に大感謝です。