両神山(りょうかみさん)

日本百名山58座目は両神山、埼玉県秩父の山です。神戸を19時半に出発、中央道を甲府で降りて登山口の両神山荘駐車場に午前2時に到着し仮眠、6時半から登りました。標高差は1100m、鳥の声に癒されながら3時間弱で1723mの山頂につきました。

両神山頂からの眺望

おにぎりを食べて待っているとガスが晴れて北西側の展望が開けました。左から、八ヶ岳、北アルプス、浅間山ですが、曇でややかすんでいます。日航機が墜落した御巣鷹尾根は画面左やや奥の山並みです。どうぞ安らかにお眠りください。合掌。

両神神社

両神山は信仰登山の霊峰で、山頂に奥社、ふもとに里社があり、山頂直下の尾根上にあるここが両神神社の本社です。「りょうかみ」は「やおがみ」(=八つの尾または頭がある龍神)の訛化という説が有力です。原初は水の神でしょう。後世には、ヤマトタケル伝説と結びつき、両神とはイザナギ・イザナミのお二人の神様です。

オイヌサマ(右)

同じ秩父の三峯神社の神の使い(=御眷属)はオオカミで、一般にオイヌサマと称されています。江戸時代に秩父地方では、山中に棲息する狼を、猪などから農作物を守る眷族・神使とし「お犬さま」として崇めるようになりました。

オイヌサマ(左)

こちらは左側、阿吽の「吽」で口を閉じています。可愛いワンコに見えますが、牙があるのでやはりオオカミです。昔、吉野の高見山へ登る途中に立ち寄った鷲家口を思い出しました。明治38年に鷲家口で捕獲されたニホンオオカミが最後のニホンオオカミです。海外から持ち込まれた狂犬病やジステンバー、さらに明治期の殖産興業による森林開発、それらが原因で、全国ほぼ同時期、明治後期に絶滅したようです。でも、この広い山地のどこかに実は生き延びてくれているのではと想像してしまいます。クニマスのように・・・。

恵林寺山庭園

両神山の帰りに山梨県塩山市にある武田信玄ゆかりの恵林寺に寄りました。信玄や家臣の墓があります。江戸時代は柳沢家の菩提寺でした。立派なお庭と思ったら、開山である夢窓疎石による池泉回遊式庭園で国の名勝でした。天龍寺や西芳寺も夢窓疎石ですね。

仁人自是愛山静 仁人(じんじん)はみずからこれ山の静(せい)なるを愛す

智者天然楽水清 智者は天然に水の清きを楽しむ

莫怪愚惷翫山水 怪しむなかれ愚惷(ぐとう:愚か者)の山水を翫(もてあそ)ぶを

只図藉此砺精明 ただこれを藉(かり)て精明(心)を砺(と)がんことを図るのみ

恵林寺山門

天正10年(1582年)、武田家滅亡後、織田信長の軍勢は恵林寺を取り囲み、快川(かいせん)国師以下、恵林寺に身を寄せていた120名ほどを山門の楼閣上に押し込め、焼き殺しました。その地に山門が再建され、国師の最期の言葉が掲げられています。

安禅不必須山水 (安禅は必ずしも山水をもちいず)

滅却心頭火自涼 (心頭を滅却すれば 火も自ずから涼し)